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午前7時。携帯電話が鳴った。階下の母からだ。『綺麗に見えてるわよ!』えっ!まだでしょう??眠い目をこすりながら掛け時計を眺める私。
世間が日食ムードに包まれ始めた頃、早々に父は母と二人分の日食観察用メガネを買いに走っていたのだ。 ワタシ・・はというと、近くの書店に立ち寄った際、まだ数個残っていたので後で・・・とノンビリ構えていたのがいけなかった。やはり、買っておくか・・・と思った時は後の祭り(笑)当日の天気予報は曇り。かなり見えない確率多し…との予報だったので、まぁ、その時は彼らから、借りる確約を取り付けたのだ。 電話から、数分着替えて犬のお散歩をどうするか・・・と躊躇いがちに外へ出てみると、なんと!かなり外は晴れているではないか!ただ、心持肌寒い。 午前7時20分。アパートへ続く外階段へ登って見ると、店子さんの青年も「おはようございます」と言って部屋から飛び出してきた所だ。ちゃんとメガネを持っている!<みんな凄い!> 多少の雲がかかってはいたが、切れ目切れ目からどんどん太陽と月との重なりが始まって行く状況が見てとれた。『わぁ!』何処からか歓声が聞こえた。振り向くと、前のお宅の二階からの声である。窓を開けてみんなメガネの顔・顔。ふと、下を見ると隣のマンションの入り口に若いカップルが裸眼で空を見上げているではないか・・。大丈夫?自分の事をタナに上げ少々心配した。私は母のメガネを交代で貸してもらいながらどんどんリング状にになっていく、この932年振りの現象を眺める。『すごい!綺麗!よく見えるのね!』母も興奮している。『使うかい?』下の道で眺めていた父が例の裸眼の若いカップルに声を掛けている。 戸惑いながら、はぁ・・・と恐縮しながらも父の差し出した簡易メガネで空を見上げる若者・・。 絶対に接触することなどない・そんな人間関係が一つの自然現象を介して触れ合っている・・・。 とりあえず完成したリングを満喫したので、いい加減しびれを切らした犬のリードを伸ばし散歩へ走り出した。 角を曲がると!まぁ、まぁ、ここでも皆が空を見上げている。数メートル先の大通りでも、そこからつながるいつもの散歩道・遊歩道でも・みんなが空を眺めながら話している。戸惑っているのは我が家のMayだ。 『メイ君!』今度はいつもお世話になる犬のトリマーさんから声を掛けられた。 何処の角を曲がっても、いつもの静けさとは違う人間の様子に戸惑い続け・・・朝の排泄をさっさと済ませ・彼はそそくさと我が家へ向かって走り出したのだ。何か?いつもと違う、何かを感じたのだろう。 でも、彼だけではない。地球に住む私たちがこのたった5分間という時間の流れの中で、何も考えずひたすら空を眺めている姿は素敵だと思った。そこには一瞬・肩書も、年齢も性別も年齢の差もなくて・・・・太陽と月という自然界が織りなすイベントに子供の様になって心を一つにしている姿・・・。 現代人も本当はこんなに素直なんだよ・・・と様々なものにがんじがらめになって生きている我々人間界が切なくも思えた。 下を向かないで、何も考えないで・ただただ無心で月や星を見る事大切ではないだろうか・・。 眺める事だけに集中すること。 2030年北海道に行かない限り・・二度と体験できないこの不思議な現象を両親と共に過ごせた事、不思議な朝時間に感謝をした。 2012・5・21 Terumi
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